9月9日、寝たきりだった長崎の祖母が亡くなった。104歳だった。
100歳を超えて本当に長生きした祖母だった。
祖母は、自宅に茶室を作り、お茶のお点前を教える先生をしていた。
子供の頃のある日、長崎の祖父母の家に行ったとき茶室に忍び込んで、偶然そこに置いてあった「茶碗」という分厚い本をみて衝撃を受けた。そこには国宝の名碗などが写真とともに解説がしてあるのだが、本当に美しい茶碗ばかりで、特に最初にある曜変天目茶碗には心を奪われた。この日、完全に茶碗の世界に引きずり込まれた。
それ以来、行くたびに茶室に忍び込んで、たくさんのお茶碗を眺めるのが好きになった。
※あの本は、有名な本みたいで、いろんなところで見る機会があったので、きっと「茶碗」という題名を探せばそれしかないと思う。
そんな祖母だから、お茶を毎日飲んでいた。そのせいかもしれないが104歳という長寿になったのかもしれない。お茶は体にいいんだろうね。カテキンとか。
本当に優しい祖母だった。会うたびに必ず抹茶をたててくれた。
たまに会うからこそ気づくんだけど、80歳を過ぎた頃から抹茶の中に玉や、味にムラができだした。本人は同じようにたてていると思っていうんだろうけど、だんだん老いが進んでいることを僕は感じていた。でもたててくれる心が嬉しくて「おいしい」と言って飲んでいた。
そのうち、抹茶を点てることができなくなった。
意識があるうちに長崎に行ってお茶をたてて貰えば良かったと後悔している。
ちょうど、展覧会の搬入が終わったところだったから、葬儀に向かった。
20年ぶりの長崎だった。
駅前や街の様子はすっかり変わっていた。
深堀隆介
Riusuke Fukahori