2015年5月31日日曜日

篠田桃紅さんの特集を見て

さっき、ETV(NHK教育)で、墨を使う美術家 篠田桃紅(しのだとうこう)さん(102歳)の特集を見た。



とても良かった。「作家として、どう生きていくべきか」沢山の答えを教わったように思う。

102歳でも、いまでも新しいことに挑戦したいとおっしゃっていたのがすごい好き。




一番心に残ったところは、篠田さん自身、今でも墨に翻弄もされるというところ。

墨に教わることもあるし、墨に悩まされることもある。とのこと。


「(墨は)ぎりぎり絶望させることはない。」


この言葉、いたいほど胸にきた。

篠田さんの言う「墨」の立ち位置と僕の「金魚」がどこか似ている。

僕は、金魚という存在に今でも翻弄される。今現在もずっと翻弄されているところだった。

でも僕の答えは「金魚」の中にあるのだ、と篠田さんの言葉は言ってくれたように思った。

篠田さんの力強い言葉は、僕の迷いも吹っ飛ばしてくれる。


僕も金魚に翻弄されるけど、もっともっと「金魚」を信じていこう。金魚救いされたあの日を解明することが僕の仕事だ。



篠田さんの作品は、墨を使うけど、いわゆる書家臭くないところがいい。絵画と書が融合しているから好きだ。


僕は、新しい独自性を強く持った人の作品が好きなんだと改めて思った。



ほんと、あんな100歳になれたらいいな と思った。







深堀隆介
Riusuke Fukahori




2015年5月27日水曜日

横須賀が最後になるかもしれない作品たち

画像:金魚酒「月花香(げっかこう)」の花びらを描いているところ。(旧ブログより転用)


現在、横須賀美術館「ほっこり美術館展」に出品中の

 
金魚酒「月花香(げっかこう)」
金魚酒「緋紬(あけつむぎ)」
2009年の桶作品「四つの桶(和金、月光、雪丹、草影)」



は、今後海外にお嫁入りする予定です。



海外に行ってしまうと、借用にはコストも掛かり、なかなか日本には帰ってこられなくなると思います。


今ならまだ気軽に見ることができる今展覧会に、どうぞお越しください。





深堀隆介
Riusuke Fukahori








2015年5月25日月曜日

アーティストもニートから


「今の若者は無難な道を行く人が多い。」とか、「社長になるより部長になりたがる。」とかよく聞くけど、僕は、そんな事ないように思う。

僕らの世代より独立心が強くて、しっかりビジョンを持っている人も多いように思う。


僕が学生だったころネットこそなかったが、将来何になったらいいか迷っていた人も多かったし、バブルがはじけて間もない頃だったから、まだバブル時代の常識が残っていて、就職できない学生はカスのように見られた時代でもあった。


だから就職できないなら、いっそ自分で切り開こうという「開き直りタイプ」が出現してきたように思う。ちょうど今の四十才前後ね。


このころに、引きこもりニート(この言葉もまだなかったが)が増えだしたと思う。

就職できず自信もないなら、いっそ親に食べさせてもらおう、みたいな子供じみた大人が増えたんじゃないかな。

打たれ弱い若者が増えて来たのもあるだろう。




僕は26歳で職を辞めて、作家活動を始めたんだけど、最初社会人からフリーターになったのが正直ストレスだった。

でも、考えてみれば自分の意識の問題で、フリーターという意識で生活するのではなくて、独立してアーティストとして活動していくんだ!という修行中の意識に変えることを覚えたら、自ずと楽になった。


そこで僕は、社会人の時と同じように税務署にいった。別に儲けもなかったし、行かなければそのまま何も払わなかったと思う。でも自分を変えるために行った。(ただ、前年に年収が400万位はあった人間が、突然年収4、50万になればビックリされるし、申告書に△マイナスが付くと受付の女性に笑われたことも)


就職して覚えたことに、納税がある。国保や年金も。

それまで会社がしてくれていた確定申告を自分で出しに税務署や区役所に出入りするようになった。最初はよくわからなくて汗だくだったけど勇気もついたし、アートを作っているけど社会の中でやっている感覚が芽生えた。


アートで食っていく中でも、これが結構大切な事だと思う。




画家志望だった同級生などは、ここらへんが抜けていて、自由に生きていくことに美学を感じすぎで、「税金などは一切払わん!」ということを僕に言っていた。

僕は心の中で(あなたが馬鹿にしていたサラリーマンたちが働いて納めた税金のおかげで、あなたも公共の場で沢山の恩恵を受けているんだぞ)と思った。


自由ってかっこいいかもしれないけど、無責任なのはいけない。



アーティストの世界は不安定な世界だけど、不安定だからこそ、いい作品を作ろうと努力するわけだし、好きな事でおまんま食べる訳だから、人より辛い思いをするのは当たり前だと思う。


いくら「自由に」「好きな事だけ」と言ったって、その裏側には、その分努力しなければならない事もあるし、代償もあることを知ってほしい。その上での自由なんだ。


 

僕は、アーティストになるのに最初は、ニートでもフリーターでもいいと思っている。決まりもないし、セオリーもない。

まして、画塾や、芸術大学なども行かなくてもいいと思う。

大事なのは決意である。


将来を考えて、スネをかじるのもいいと思う。その時期にいろいろ知識を養っておくのはいい作戦でもある。

独立した時を見据えて努力すれば、必ず実を結ぶだろう。






深堀隆介
Riusuke Fukahori
















2015年5月18日月曜日

「ニューでめ金」誕生!



でめマグに新しい兄弟が生まれました。

金彩バージョンです・・・これは、まさにでめ金!!(と呼べるのではないか)


この三兄弟でようやくしっくりきたように思いますね〜





最近僕は、これでコーヒーを飲んでいます。すると不思議な現象が・・・・・コーヒーを飲んでいくと


“ピカー!!”

っと底の方から金色に輝く出目金の姿が浮かび上がるではありませんか!



「これは、なかなか、おもしろひ・・・・」




販売はもう少し後、この夏からに使用と思っています。

あと、注意点があります。 
金地は電子レンジに入れると通電してしまうので、あたために電子レンジを使用するのはやめてください。


それでは、出会える日を楽しみにしていてくださいね。





深堀隆介
Riusuke Fukahori









2015年5月15日金曜日

"Soufu no Mon," (Gates of Grass and Wind)




I would like to discuss a little bit about my art piece, "Soufu no Mon," (Gates of Grass and Wind/草風ノ門) displayed in the current exhibition in Yokosuka Museum of Art. 


Firstly, this octagonal ceramic piece is created by Sakaida Kakiemon XIII during the Meiji Era(1906~82). 


This ceramic bowl is a very precious antique, and just the bowl itself costs around 400,000 JPY. I was able to create this art piece with the help and support of many people. 



As fortunate and honored I was to be able to use this antique dish-ware for my art work,  just thinking about actually placing the resin inside of this rare ceramic piece made me nervous, and i remember that i couldn't put myself to start on the artwork. 



One day, as I was gazing into the dish-ware, I noticed four gates in the design, and the scenery through each of those gates. 


At that moment, I felt the presence of "wind" through these gates.


The serene and calm design on the ceramic seem to emphasize even more  the strength of the wind blowing on the other side of the gates. 



So I decided to paint the leaves and flower petals of each plant (pine, bamboo, plum and orchid), as though the wind had carried them into the bowl through the gates.  


If you can observe this art piece with this in mind, I think you will be able to enjoy it even more.




So you might be wondering,  why are there no flower petals from the orchid?  

As a matter of fact, if you can look closely, there are two ladybugs taking flight from the orchid leaf.


Although the "Picture Realm," "Land Realm," and "Water Realm" can not possibly overlap in reality, this work demonstrates the borderless and mysterious world where all three of these components exist in unity. 



As a side note, due to the fragility of this piece, it will be difficult to display in future exhibitions. Therefore, I hope you take this opportunity to go see it currently on display at Yokosuka Museum of Art. 





Riusuke Fukahori 
深堀隆介



 [翻訳Translater: Harushka]








2015年5月13日水曜日

作品 草風ノ門 




今、横須賀美術館に展示中の僕の作品 


「草風ノ門(Soufu no Mon)」



これについて少しだけお話します。

まずこの八角鉢は何かといいますと、実は 第十三代酒井田柿衛門(明治~昭和)の物になります。


この鉢だけで、かなりの価値があり、鉢だけで40万円くらいはすると思います。 この作品はたくさんの方々のご協力のもと制作することができました。


なのでそれに描けるだけでも光栄なことなんですが、いざここに樹脂を入れて作るとなると、なかなか緊張するもので、一向に制作が進まなかったのを思い出します。






ある日、この鉢を眺めていたとき、文様の中に4つの門があることに気がつき、その門から見える景色に目がとまりました。



その門の向こうの景色に「風」を感じたんです。


静寂すら感じる文様に囲まれているからこそなのか、門の向こう側の世界にビュービューと音が鳴るくらい風が吹いているように感じられたんです。


そこで、僕は、その門のそれぞれ生えている植物(松、竹、梅、蘭)から、風によって葉っぱや花びらが吹き込んできたように、葉っぱなどを描いたんです。


そう思ってこの作品を見てもらうと、一層楽しいと思います。





では、赤い蘭の花の花びらは無いの?と思うかもしれません。


実は、よく見ると蘭の葉っぱからてんとう虫が飛び立っている様子がみてとられると思います。




実際の水の世界ではありえないのですが、「絵の世界」「陸の世界」「水の世界」が一体となった境界のない不思議な世界が存在する作品なのです。





なお、この作品は、非常に取り扱いに注意が必要なため、今後なかなかお見せできる作品ではありませんので、この機会に是非ご覧下さい。







深堀隆介
Riusuke Fukahori






















2015年5月11日月曜日

福島GW旅行記 南相馬の菜の花迷路



午後、上野さんたち復興浜団さんが開催している菜の花迷路に到着。 沢山のお客さんでにぎわっていました。

今年は去年よりもさらに拡大し、一面まっ黄っ黄! 迷路も難しくなっていました。

大人より、子どもたちの方が感がいいみたいで、迷わずゴールへ行くのですが、大人は変に勘ぐって袋小路に迷い込む事が多かったです。

途中で知らない人に鉢合わせしても、ここでは「こっち行き止まりっすよ」など言い合って連携プレイが起こるから不思議だよね。








僕が来るということで、以前お世話になったNHKのカメラマンさんたちが家族できてくれた。嬉しかった。 奥さんと仙台貨物の話で盛り上がる。







最後に上野さんたちと記念写真。皆さんいい笑顔です。


五月の心地良い日、上野さんの旧家にたくさんの鯉のぼりが掛かっていたのが印象的だった。








深堀隆介
Riusuke Fukahori






2015年5月10日日曜日

福島GW旅行「骨董市に遭遇」



福島県いわき市から開通した国道6号線を北上したいと思い行く。


途中、いわき市を出る手前あたりでトンネルを抜けたとたん!国道脇のお寺で骨董市をしているのが見えた!


100mほど先で急停車してUターン。 


息子たちは、早く南相馬の菜の花畑の迷路に行きたいので、「なんで戻るの!早くいこうよー!」と叫ぶ。

しかし、私、フリーマーケットや骨董市はどうしても見たいものの一つなのである。


なぜなら、その中に次の作品になる器があるかもしれないわけで。

そう思うと、見ておきたいのである。

フリマや骨董市はリサイクルショップ等では決して出てこないような、ガラクタもあるからいい。



このガラクタが重要なんですね。キズやシミも味わいです。ただし古ければいいわけでもありません。チョイスにはセンスが問われるものでもあると思います。

だから僕にとってはガラクタではなく、すべて宝の山です。



「今回もまた沢山買ってしまった・・・・・」



この中から将来、いい作品が生まれてくれるといいな。


と、なんだかんだやっていると時間が経つのも早く、息子たちがとうとうしびれを切らし大暴れ。早々に南相馬へ向けて車を出した。





国道挟んでお寺の向かいには、海岸線が続き、磯には鳥居と橋がかかっていて何ともいい風景だった。

でもよく見ると、まだ手すりなどが壊れたままだった。









深堀隆介
Riusuke Fukahori






2015年5月6日水曜日

ほっこり美術館と題された裏には




今、横須賀美術館で開催中の「ほっこり美術館」展。


「ほっこり」という和む作品をテーマにした展覧会なのですが、

僕にオファーが来たときに、ちょっと疑問もあった。






自分自身「ほっこり」という言葉はこのとき初めて聞いたくらいの言葉で、どういう状態の事を「ほっこり」というのかわからなかったことと、

学芸員さんがアトリエに来てくださった時も、僕は今回のテーマが本当に自分に適しているのか尋ねたくらい、僕の作品が「ほっこり」なのか、わからなかったからだ。




4年くらい前に上海のアートフェアでの展覧会のとき、ご一緒したギャラリーオーナーの方に「深堀さんの描く可愛い金魚には刃(やいば)がある」と獲物を狙うトラの目のような顔で言われたことがあった。


僕は、この時ばかりは「(この人には見抜かれている!)」と心の中で驚いたのを覚えている。


そう、僕の作品は、一見和む金魚のいる風景のような作品ですが、その背景にはいろんな感情や、皮肉を含めたりしています。

もちろん何でもない小さな作品でも積層して描くという技法で何日も掛かっているということなど、和みの裏にある異常性なども内在しているのは事実です。

だから、最初にオファーをいただいたときに疑問に思ったわけです。



しかし、今回のほっこり美術館展に出品している他の作家たちを見て、学芸員の人たちが何を考えているか何となくわかってきた。

他の作家さんの作品を見ても、ただ単に「ほっこり」でもなく、その裏側にあるドロドロした感情などが内在している作品のように感じたからだ。



そういった意味では、「この絵は皆様をほっこりさせるような作品を描いたんですよ。」と絵描きが言っていたら、モヤっとすることこの上なしですね。





深堀隆介
Riusuke Fukahori








2015年5月2日土曜日

なつかしい味??!!


先日、家族で近所の行きつけのそば屋へいった。

昔ながらのおそば屋さん(うどんとかカツ丼もある感じ)なんですが、


そこは、団地の中にあって、特に「こだわりの素材使ってます」とかそういう訳ではないが、奇をてらわず、ちゃんと仕事しているブレのない味が我々のお気に入りなのである。



そこで、3歳の次男坊は、なぜかカレーライスを注文。


いわゆる長細い鉢皿に、いわゆる盛りつけられた、いわゆる普通のカレーライスが出てきた。それまで誰もここのカレーは食べた事がなかった。


味見すると結構おいしい・・・しかも子供の頃を思い出す昔ながらの洋食屋のカレーライスと言った感じでもある。

そう思った瞬間、3歳の息子が…食べながらこう言った。






「なつかちい味〜」 


「(我ら)・・・!!!!」 絶句&爆笑。 






深堀隆介
Riusuke Fukahori












2015年5月1日金曜日

横須賀っていえばHIDEだった



先日の僕のトークショーに東京から遠い横須賀に駆けつけてくれた女の子がいるんだけど、彼女は横須賀は遠く感じないそうだ。



聞くと、なんでも17年前に亡くなったHIDE(もうそんなに経った!(驚))のお墓参りなどに来ているそうだ。20代くらいに見えるのに、なぜHIDEを・・・



それを聞いて、横須賀といえば「HIDEのふるさとだ」という認識が以前は強かったことを思い出した。

HIDEミュージアムも最近まであったように思っていたが、もう10年も前に無くなっていたことに、時間の流れる早さを感じた(小泉元首相若かったもんなぁ)。


横浜に引っ越してきた当初、横須賀や走水はなんか居心地がよくて、制作に行き詰まったときにはしょっちゅうリフレッシュしに行っていた。(ここ最近ご無沙汰だったが)

特に走水の海を見ていると和む。昔ながらの漁村の前を大型タンカーが往来する光景が何とも言えず、面白い。
(昔、TV「未来シアター」で息子と海を眺めていたのも走水の海岸です)



車で聞いている僕のベストCDには、ジャンルとわずいろんなミュージシャンの曲が入っていて、HIDEも一曲だけ入っている。

「HURRY GO ROUND」という曲。


HIDEの最後の曲。正確には亡くなった後に発見されたテープに入っていた曲だったと思う。

この曲の中で、僕が特に好きな箇所は、最後の方で3拍子になるところ。

そこの歌詞は、まるで僕が金魚に救われた「金魚救い」と同じようなことが書かれているんです。

抜粋しますと、




「あの日、見えなかった 愛でるべき花たち いま日だまりの中 首かしげ それでも優しく微笑んでいる」





「若いときには気にもならなかった美しい花。ようやくその美に気がついた。そんな僕にも花たちは微笑んでくれている。」 そういっているようにも思うんです。もう一つの解釈として。

人間ってそれまで何とも思わなかったものや、汚いと思っていたものが、突如として美しく見えたりする時があるんですよね。






深堀隆介
Riusuke Fukahori