2015年10月10日土曜日

鴨居玲という画家


         ※画像 これは現在巡回中の石川県立美術館のポスターです。


鴨居玲という画家をご存知でしょうか?


絵に興味のある方は絶対知っているくらい人気があった画家さんです。


すでに自ら命を絶ってこの世にはいません。


僕は学生のときにこの方を知って、その独特の世界にはまりました。


若い僕の心に、強烈に訴えてくるものが彼の絵にはありました。




先頃、東京駅のステーションギャラリーで鴨居玲展を観に行きました。

久々に彼の絵を見て感じたのは、自分自身も40歳を超え、彼と同じような状況にあり、若い頃とは違う目線になっていました。興醒めしてしまう絵も確かにありましたし、そうではなく、昔は嫌いだった絵が逆に良く見えたり、聞こえなかった彼の声が今では細部にまで随分と聞こえるようになっていました。


自分も美術の世界だけでご飯を食べ続けてもう15年になります。

作家業は他の職業とは少々違い、食べるために売れなくてはいけないのに、ウケるウケないとは違う自己表現もしなくてはならず、葛藤や苦しみがどうしても伴います。だから面白いのですが、そもそもそれらは矛盾するんですね。


それに耐えられない人は、作家には向きません。


鴨居さんの絵からは、本当の自分と向き合う姿勢と、また相反する世間に隠すような偽りの自分がいる様に思えました。コンプレックスもかなりあったと思います。(僕もそうだから心境が絵から伝わる)



僕は、彼のグレー調の絵画群を見続けるうちに、本当の彼は沢山のカラフルな色を使いたかったんじゃないか?もっと笑っちゃうような明るい絵も描きたかったんじゃないか?と思えてきたんです。

実際、下地にはかなりカラフルな色を使っていると思います。それがもう一人の鴨居さんかもしれなません。


でも画風が変わる事は、世の中が(人気もあるし、生活もあるし)許してくれなかったように思います。


生前のTVのインタビューなどに答えているときの彼の表情には、どこか何かを隠しているような、一見苦しみもがく画家を演じているようにも見えました。


本当はひょうきんで明るい人に見えるんです。鴨居さんって。そんな自分を表面に出せない不器用なところがある人だったと思います。


もし、まだ生きていたら、彼の描く絵は、きっと明るい画面になっていたんじゃないでしょうかねぇ。草間弥生さんみたいな・・・


優しさを感じるんですね。彼の絵には。


僕はそんな鴨居玲さんに強いシンパシーを感じてしまう。愛すべき画家の一人です。





隆介
Riusuke







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