2015年6月12日金曜日

掛軸「纏水(てんすい)」 



 命名「纏水」(てんすい:En  TENSUI)



先日、根津美術館の茶室にて、ファッションデザインユニット・matohu(まとふ)さんの10周年記念の茶会がありました。(お茶会のことは後日ブログで)


そこからさかのぼること数ヶ月前、matohuさんよりこの茶会で使う軸を描いてほしいとの依頼があり、お受けしました。

これが初めて軸になります。 そして軸の布をmatohuさんの布から彼らにチョイスしてもらいコラボレーションという形でこの纏水は生まれました。



実は描き始めるまで、2ヶ月くらい描けずにいました。失敗が怖かったのもあるでしょう、10周年のお茶会に飾られるというプレッシャーもありました。

聞けば、軸は茶会のメインだそうで、そういう意味でも、僕はこれを描く際にプレッシャーや緊張感のある中で

「いかにリラックスできるか」「いかに遊べるか」

というもう一段階上の領域を目指しました。

プレッシャーがある場合、人はやり過ぎます。たとえば、人目を気にして描きすぎたり、手数を増やしたりします。結果、重苦しいいやみな絵になったりします。


ちなみに一枚目を描いた時、緊張から描きすぎて、なんだか気持ちわる金魚ができました。なかなか、さらっと描くのは難しいんですね。



そんな時、福島へ家族旅行にいきました。途中立ち寄った常円寺で、急遽墨で金魚を描いてほしいということで、墨絵を描きました。その時、楽しく、気楽に、でも緊張感をもって描く事ができました。そのおかげで、緊張がほぐれ、何かつかむ事ができました。

いいウォーミングアップになったんです。そして帰宅後、一気に纏水を描き上げました。





そして、この本番の茶会で初めて完成品をみて、matohuさんがチョイスした布
が僕がよく使うタイルに見立てた四角いエンボスのある真っ白の布だったことに驚き、予想を上回る完成度に胸が高鳴りました。本当に嬉しかったです。






「存在する空気を人は感じないように、実は金魚も水を感じていないのではないだろうか。しかし実際には水を纏(まと)っている。金魚からすれば無を纏っているのだ」 


その思いから纏水と名付けました。




二匹の金魚は、matohuの堀畑さんと関口さんのお二人のイメージを表しています。
登竜門というのは鯉が滝をのぼって龍になることですが、金魚は何になるんでしょうね。蛇でしょうか(笑)?

でも鯉が太陽なら、金魚はでしょうね。 月は、金魚と同じで「愛でる」ものですもんね。




このような経験をさせていただいたmatohuさんへ心から感謝を申し上げるとともに、10周年のお祝いの言葉とさせていただきます。



















深堀隆介
Riusuke Fukahori









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