2015年6月16日火曜日

橘小夢のこの絵は逆さまではなかろうか?




いま弥生美術館で開催中の橘小夢展


明治〜大正〜昭和と挿絵などで活躍した日本画家だ。


まだ展覧会に行ってはいないものの、是非彼の絵を見たくて会期中になんとか時間を見ていきたいと思っている。


展覧会情報で紹介している作品の中に気になる絵があった。


                             "水魔Suima" / 橘小夢Sayume Tachibana 1932

かっぱが裸の美女を水の中に引きづりこんでいる絵「水魔」だ。


ドキッとくる変わった構図やモチーフに衝撃を受けたのだが、なぜこの構図になったのか疑問に思った。

しかし、僕は金魚を描くのですぐにわかった。


この絵、天地が逆さまじゃないかな?って




水紋を人間は下に見るのが(池など水面は足下にあるから)常だからか、出版する際、挿絵を差し込んだ印刷所の人が何の疑問ももたず、水面を下にして掲載してしまったんじゃないかなと推測する。



僕は金魚を描くとき、金魚といっしょのに水中に潜っている想定で絵を描きます。その時水面は下ではなく上にある。


水中からみた水面は天にあるわけです。

で、僕が推測する正位置はこちら↓



だからこの絵も水中の絵だから水紋は天になければおかしいし、水底へ美女を引きづりこむならなおさら天地が逆に思える。

泡の反射光も、水紋の方を向いて自然になる。


しかし、落款らしき朱がそれでは左上になってしまい、ちょっと変だ。
この落款らしきものは出版社の認め印だと納得できるのだが、画像からは読み取れない。

また、逆にすると水草も逆さまになってしまうように思うし、カッパが引きづり込む怖さは増すが、絵の面白みには欠けるとも思う。




あと、物語を知らないのでそれを読めば僕の推測が間違っているかもしれない。

いずれにせよ、その辺を解決するためにも実物を観に行ってみたいと思う。





深堀隆介
Riusuke Fukahori


※17日14:18 追記
この記事に多くの意見がよせられ、本当にありがとうございます。私が言いたいのは、ある作品が美術館というものに飾られていたり、画集などで紹介されているからといって、それがけして正解ではないということです。何でも言われた事を鵜呑みにせず、自分なりに考索するのが大事だと思っているからこそ、提議した次第です。

確かに、この絵が天地が逆だったとしてもどうでもいい事だとは思います。残された作品を前に、伝授されたとおりのままを素直に鑑賞すればいいと思います。
ただ、絵を描く人間として、自然にこの絵を見たとき、少しだけ違和感を感じたのがこの記事を書くきっかけになりました。

なぜなら、もし僕の死後、僕の作品が方向を間違って展示されていたら、僕はお化けになってでも「そっちじゃぁない、逆じゃ逆!」と出てやるくらいの気持ちはあるからです。作家だったらきっとみんなあります。
ただ、僕の金魚の平面作品は上下が基本ありません。なので斜めに壁に飾っている人や、上下逆さまに飾っている人もいます。飾る方向は個人の自由です。

でも作品には作者の描いた向きがあり、一応基本となる正位置はあるはずです。

今回のこの「水魔」がもしも最初逆で描かれていたとしても、それは時のイタズラがいつのまにか反転させ今の位置になったとして面白いエピソードだとは思います。

ただ、僕が気になっているのは、作者・橘小夢氏の真意だけです。








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